時候のあいさつ

時候の挨拶

 

○季節感を大事にする
四季の風物を表す「時候のあいさつ」は日本の独特の慣習です。特別な決まりはないので、格式高い漢語調とやわらかなイメージの口語調を差し出す相手と用件によって使い分けるといいです。

 

○便利な漢語調 個性の出せる口語調
「〜の候」「〜のみぎり」という使い方をする漢語調の言葉は、その後「いかがお過ごしでしょうか」などと相手の安否を気遣うことを続ければ、目上の人や改まった手紙に無難に使えます。はがきなどスペースが限られているような場合にも大変有効です。ただ旧暦に合わせて作られたものが多いので、現実の季節感とズレが有る場合もありますから、間違わないように注意しましょう。
一方の口語調の言いまわしは、より個性的な表現が楽しめます。女性の場合はかなりあらたまった手紙にも使えますので便利です。

 

○アレンジがポイント
慣用句は便利ですが、ただ決まりに従ってさえいればいいという訳ではありません。例えば、沖縄などの温暖な地方ではいくら冬でも「厳寒の候」は適切とはいえません。また冷夏なのに「酷暑のみぎり」というのはおかしいです。「軒のつばめのひなも、巣立った頃になりました」など、身近の風景をスケッチすれば、決まり文句にとらわれずに人柄を感じさせる印象深い手紙になります。

 

7月 時候のあいさつ

漢語調(〜の候 のみぎり)
・猛暑 ・炎暑 ・大暑 ・酷暑 ・烈暑 ・極暑 ・盛暑 ・仲暑 ・季夏

 

口語調
・暑中お見舞い申し上げます
・梅雨もようやく明け青空が戻ってまいりました
・夏もいよいよ本番となり
・日ごとに暑さが増して
・梅雨明けの暑さはまたひとしおに感じられますが
・夏空がまぶしい季節となりましたが
・今年の夏は例年になく厳しく
・水辺の恋しい季節となりました
・海山もにぎわいを見せるころとなりました
・うだるような暑さが続きますが
・本格的な夏が訪れましたが

 

ヒントにしたい季節ことば
文月 親月 七夕月
小暑(暑気に入る日、7日頃)
大暑(暑さの厳しい頃、小暑の後15日め)

8月 時候のあいさつ

漢語調(〜の候 のみぎり)
・晩夏・残暑・暮夏・残夏・初秋・立秋・秋暑
・早両・納涼・残炎・向秋・処暑

 

口語調
・残暑お見舞い申し上げます
・立秋とは名ばかりの暑い日が続いておりますが
・今年は例年にはない猛暑で
・残暑が身に応える毎日ですが
・残暑お見舞い申し上げます
・朝夕ずいぶんしのぎやすくなってまいりましたが
・鳴く虫の音に秋の気配が感じられるように
・夏の終わりに近づいておりますが
・夏の暑さもようやく峠を越えたようですが寝苦しい夜が続きます
・夜風にも秋が感じられる今日この頃

 

ヒントにしたい季節ことば
葉月 壮月 秋風月
立秋(秋の始まり、8日頃)
処暑(暑気がおさまりだす23日頃)

9月 時候のあいさつ

漢語調(〜の候 のみぎり)
・初秋・秋涼・新秋・清涼・野分・孟秋
・爽秋・重陽・秋分・新涼・秋涼・涼風

 

口語調
・月がさえざえと美しい季節になりました
・天高く馬肥ゆる秋と申しますが
・さわやかな秋晴れがつづく今日この頃
・虫たちがその音を競って鳴いております
・しのぎやすい好季になってまいりました
・二百十日も無事に過ぎまして
・先日までの暑さが嘘のような、過ごしやすい季節となってまいりました
・秋風が肌に心地よく吹きすぎ
・暑さ寒さも彼岸までと申します
・灯火親しむ頃と相成りました
・長く続いた猛暑もようやく一段落し
・日ましに秋の深まりが感じられるこの頃
・青空が恋しいこの季節

 

ヒントにしたい季節ことば
長月 玄月
白露(8日頃 秋分の前15日め)
秋分 菊月

10月 時候のあいさつ

漢語調(〜の候 のみぎり)
・仲秋・秋色・錦秋・秋冷・秋雨・秋寒
・菊香・夜長・紅葉・清秋・秋容・爽涼

 

口語調
・菊香る季節となりました
・実りの秋と申しますが
・庭の柿の実も日ごとに色づいて
・小春日和の暖かな日がうれしい今日この頃
・日増しに秋も深まって
・紅葉も鮮やかに色づき
・日もずいぶん短くなって
・朝夕は肌寒く感じる今日この頃ですが
・銀杏の葉が黄金に染められて

 

ヒントにしたい季節ことば
神無月 時雨月 小春
寒露(露が凍るほど寒い時期、8日頃)
霜降(22〜23日頃)

11月 時候のあいさつ

漢語調(〜の候 のみぎり)
・晩秋・暮秋・向寒・深秋・孟冬・霜秋
・寒気・初霜・氷雨・初雁・深冷・残菊

 

口語調
・寒さもひとしお感じられるようになってまいりました
・日が短くなり、冬が駆け足で近づいてくるような
・日ましに寒さがつのり、木枯らしも吹き始めて
・山も白い雪化粧をほどこして
・落ち葉が風に舞う季節ともなり
・朝夕はひときわ冷え込むようになりましたが
・吐く息もすっかり白くかわって
・うららかな菊日和が続く今日この頃
・過ぎ行く晩秋を惜しむ間もなく

 

ヒントにしたい季節ことば
霜月 神無月 霜降月
立冬(冬の始まり。7〜8日頃)
小雪(23日頃)